ドロシーと銀の靴(77)
ドロシー(42)
ヒミツ・人妻系

在りし日の私の一部分。

22/4/29 11:47
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今回のGWに従兄弟家族が来ることになった。
コロナ禍となり、世の中の事情も決まり事も様変わりし、一部では品性に欠ける本性が露呈するようになったここ数年、京阪神都市圏から老人ばかりの此方への来訪者は、人目を憚らずには居られなかった。

何年振りかな。
従兄弟はこちらの状況を慮っていたけれど、
もう祖母も高齢だし、縁起でもないけど会いに来られるなら、来た方がいいと話もした。


私は小さな頃から、あまり家族旅行の思い出がない。

それほど豊富な旅体験がないのもあるが、
小学校の夏休みの思い出は、とても色濃く残っている。
母の故郷である島に行くのだけど、田舎からさらに田舎への移動、これがまた遠い。
旅路の記憶は殆どなく、ただ高確率で船には酔っていた。

毎年、変わらない景色と顔ぶれではある。

昔は銀幕のスタアさながらの男前だったけど、
禿げてしまった陽気な伯父。
小高い山から見る海と船、
小さな古い教会を撫でていく温い風と暑い日差し。
つんざくような蝉の声。
サメが来るけど大丈夫、と言われながら泳ぐ水の澄んだ湾。
瓶のサイダーとアブ。
裏のお墓と井戸とスイカ。
道いっぱいに潰れたミミズの死骸。
扇風機と五右衛門風呂。
トイレまでが真っ暗な廊下。

もう、おばあちゃんも居ないし
おばあちゃんちも建て替えられたけど、
とても好きだったあの時あそこに普通にあった、
色んなこと。

子供だったからこそ知っていた楽しさもあり、
子供だったからこそ、知らないままでの楽しさもあったと思う。

変わらなくて安心するものと、
変わらなくてつまらないものとは、
どんな違いがあるのだろう。


皆様の旅が、良きものになりますように^^
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