ドロシーと銀の靴(77)
ドロシー(42)
ヒミツ・人妻系

盆の入りと押し込めた欲情と。

22/8/13 22:52
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薄曇り時々青空。海辺のカフェにて。
友人を待つ間、席の目の前に飾られていた一冊の本を手に取った。

五木寛之の「ちいさな物みつけた」
めくってすぐに、深い、それでいて透き通る様な青さの、奇妙なカタチの壺の写真。
なんとなく読み進めていくと“泪壺”と書いてある。
『泪壺(なみだつぼ)。』無意識に朗読してしまった。
すると次の文章に、『なんと素敵な響きだろう、僕はこの名を目にした時何度も何度も朗読した』とか言うような事が書かれていて、惹かれるが故にか作者と同じ反応を示した事がおかしくて、けれど納得もした。

昔ペルシャの女たちは、戦地に赴いた愛する恋人や夫を思って密かに泣いた。
声を殺して泣くその涙を溜める壺だなどと説明されていた。

悲しい泪を世にも美しい壺へ閉じ込める。
いつ世も、女は拗らせてるんだなぁ、なんて^^

「泣かないで下さい」
きっとそう言われるのだろうけど、言葉に出来ないなら、泣くしかない時もあるでしょう。

滲む様に全身を、しっとり湿らせてみたい…

彼女たちの悲痛の涙はきっと、
痺れるような甘さを孕んでいるに違いない。


焦がれる思いはキャラメルのように、
焦げ付く手前の極上の甘さ。

今宵は月に寄り添う木星がよく見える、素敵な夜ですね。
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