予想以上にピエール瀧とリリー・フランキーさんの演技が凄い。
それを一層際立たせているのが、山田孝之の静かな狂気である。
そして先生の様な人は見た事が無いが、実際に存在しそうなリアリティを感じた。
他者の痛みに鈍感かつサイコパスな犯罪者。
他人を操る技術にも非常に長けている。
徹底して演じていたリリーさんの演技にも脱帽した。
色んな演技が出来るし、本当に多才。この人。
山田孝之の正義感、好奇心、殺意、などなどがないまぜになった雰囲気も物凄く良く、人間の複雑さを垣間見た。
演技もやはりさすがとしか言いようが無いが、今作はピエールとリリーに軍配が上がったかな。
題材は重いし胸糞描写も多いが観て損はしない映画だと思う。
本当にこの実行犯たる死刑囚と先生役のピエール瀧とリリー・フランキーさんの怪演が、狂気を引き立てている。
フィクションであれど同じ人間なのにこうも残酷になれるのか。
人間の闇は深い。
ゾッとするのはクリスマス・パーティーのシーン。
愛嬌ある善人にしか見えない、ここだけ切り取るとそこら辺にいる気のいいおっさんだ。
しかし、にこやかに談笑する背景で笑いながら殺しをする。
ピエール瀧の迫力が凄い。「じゃあ、ぶっこんじゃうか」という軽いノリで吐かれる台詞と、死体の入った湯船の横で平気でシャワーを浴びるシーンなど、「その光景」を画像で見せるのではなく、台詞と彼の表情だけで観る者に「その光景」を想像させるところに怖さがある。
そんな彼らの凶行に胸糞悪くするのは主人公だけではなく、我々のほとんども同様だろう。
事件を追うに連れ、「こいつらは死ぬべき人間だ」と主人公も願うようになっていく。
死を願う「凶悪」になっていった。
最後、面会室に取り残される主人公を見て、囚われているのはどっち側なのかわからなくなっていく。
主人公に共感を覚える自分もまた、囚われている「凶悪」なのかもしれない。
この作品を観たら日常的にしばらくは
「ぶっこむ!!」
と言ってしまうこと請け合い(笑)