ジョニーなりの誠実に演じた作品。
ジョニー・デップの作品は興業的にどうとかではない。
誠実に人の人生を描くのだ。
描きがいのあるそれを演じるのだ。
とても勉強になったし、ああ、こういう人間がいたんだと、
人生の資料になる。
ただ、単純なストーリーが好きな人には向かない。
仏教的価値観のようなもので見れば
人の人生の面白さがわかる。
70年代に実在したアイリッシュ・マフィアのボスを描く。
仲間を介してFBIを利用し商売敵を排除、勢力を拡大して行く。
口は災いのもと、裏切り者は命で償うことになる。
時に白昼堂々殺人を犯し、闇から闇へ消される者は秘密の墓場に葬られる。
どこか淡々と描かれる、暗黒街の恐怖政治を見る。
光と影 , 裏と表の世界で地位を築いた兄弟。
政治の世界で階段を上り続けた弟ビリー (ベネディクト・カンバーバッチ) は、犯罪に手を染める兄を遠ざける事はしない。
FBI捜査官の幼馴染とは互いに利用しあう事があっても、決して裏切ることはない。
信じられるのは身内 … 故の強い絆。
“毒を以て毒を制す” 利用するつもりが … お粗末な捜査手法。
黒いパイプによってもたらされる目の前の餌に食いつくFBI。
だが悪が栄えたためしなし、徐々に追い詰められて行く。
マフィアのボス、ジェームズ・"ホワイティ”・バルジャー (ジョニー・デップ)
筋金入りのワル、冷酷で残酷、頭が切れ故郷の人々を愛し愛される一面も。
人に弱みを見せない、その表情が読み取れない、本当の人となりは隠されたまま。
凄味のある演技だった。
暗黒街でのし上がり、やがては逃亡生活を送ることになる
その世界で名を馳せた男の栄枯盛衰の物語。