月神さんのブログ(155)
月神(35)
和歌山・不思議系

アメリカン・サイコ

21/4/19 10:57
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・金、地位、ルックス全てを持つ主人公パトリックが殺人の欲望を止められず堕落していく様。
・ウォール街で働くような超エリート達や都会人の人間的無機質さ。
この作品は主にこの二つを中心に描かれている。
前者は色々なサイコサスペンス映画で描かれるとして、興味深いのは後者だ。

監督もメイキングで、「猟奇殺人を描くつもりはない」と語っていた。

最後の場面でパトリックは全ての殺人を弁護士に吐露し、捕まえてほしいとまで願う(止められない殺人願望から逃れるため)のだが、「ポールとこの間食事をした。」と言って相手にされない。
全てパトリックの妄想だったのでは?という解釈をしそうになるが、 映画の中で人が何度も人の名前を間違えている点(他の人間に興味がないのか?)やパトリックの名前すら覚えていない描写からして、弁護士は誰かをポールだと勘違いしている。また、ポールアレンの家が不自然なまでに真っ白に塗装され、管理者が「二度と来るな」と言ったことから現実に起こっていることだと予測できる。
面倒を起こしたくないから掃除をして死体を消してしまう管理者、名刺やブランドの服の見せびらかしあい、名前を覚えない弁護士、「ドーシア」と言った流行りのレストランにこだわり、パトリックが死体を引きずって運んでも気づかない人々…どれも他者との関わりが薄くなった80年代を笑えるくらい強烈に風刺している。

おそらく最もパトリックに興味を持ち、彼の正体に気づいているのは秘書のジーンだろう。
それは彼女が人間らしさを持っている証でもあるように思う。
パトリックはこれからも自分と言う存在を確信できず、罪を受けることもなく殺人を続けていくのだろう。 個人的に好きなシーンは踊りながらミュージシャンの説明をして殺人を侵す。
クリスチャン・ベイルには本当に驚く。
役柄の狂気さよりも役柄に憑かれたような狂気的な演技力には目を見張らざるを得ない。
間違いなく一流。
この作品自体、センスあるブラックな娯楽として完成しているのは断言できる。
(c)gran-tv.jp