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月神(35)
和歌山・不思議系

ミリオンダラーベイビー

21/1/11 18:40
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まさかこんなに衝撃的な内容とは思いもせず観たのは公開されて10年以上後。今まで観た衝撃な作品の私の中で5本の中に入る。

女性主人公を選手として育スポ魂、サクセスストーリーかと思いきや裏切られた。「現実」の一言につきる。
生きていく上では善いこと悪いことが常に出来事として起こっている。
ときにそれは受け入れる側の許容範囲を超えて襲いかかってくる。全体的に陰影の強い映画だが、視聴者のこれからの人生にてこの映画の場面場面を日常に見出すことがあるのではないだろうか。境遇は違えど、誰にでも辛い選択、悲しい現実に遭遇することはある。そんなときにそっと寄り添ってくれる映画のような気がする。

さすがの名作。アカデミー賞3部門受賞。エンターテイメントとして成功していて、尊厳死、安楽死に関する問題提起も行っている。ともかくドラマチック。

貧しい女性がボクシングに情熱を持ち、ジムオーナーの助けを借りて素晴らしい才能を発揮していく。このストーリーだけで、十分に楽しめる。ジムオーナーの人物描写も効いている。ところが、クライマックスにとんでもない落とし穴が待っていた。まさに奈落の底に落ちる様。そこまでの積み上げがしっかりしているので、女性が尊厳死を望む気持ちにも、説得力がある。そして、ジムオーナーの誠実な人間性も十分表現されている。

この作品が素晴らしいものであればあるほど、成功すればするほど、社会的反発を呼び起こすことは避けられない。
体が動かなくなった人が死を望むのは当然なのか、そのことを美化していないか、という疑問は当然出てくる。また、その類似の症状で苦しんでいる人に対して”死、ね”という不当な圧力になりはしないかという心配も当然湧いてくる。

演技演出に関してはあえてなにも書きません。文句なし、流石の一言。何度観てみも良い映画。老いてからのイーストウッドの仕事はもはや神の御業とも言える。そう確信させてくれた作品。

言葉が出ないほど素晴らしい。
思うことは見た人それぞれ違うかもしれないが、それぞれの胸に深く刻まれるであろう一本。
(c)gran-tv.jp