この作品は、レクター博士を、ただの猟奇的な犯人ととるか、ダークヒーローととるかで、評価がわかれると思う。
私にとっては、ハンニバル・レクターこと、〝ハンニバル・ザ・カニバル〟は、ダークヒーローなのだ。
この作品では、クラリス・スターリングも、しっかりと、ヒーローへと成長している。
十年の月日は、頭はいいが、実力は伴わない、半分学生だったクラリスを、たくましい捜査官へと成長させた。
絶対的正義。
そのためなら、身を挺して、悪の前に立ち塞がる。
そんなヒーローへと変貌している。
オープニングのギャング団との銃撃戦は、圧巻。
しかし、彼女の強さが彼女を悩ませる。
人殺し。
その事実が彼女を苦しめる。
ヒーロー、レクター博士は、彼女を追い落とそうとする、正義の面をかぶった悪を、次々に、残酷無惨に仕留める。
詩的な言葉で愛をささやき、同じ顔、同じ声で、人の内臓をえぐりだす。
美しい話だ。
オペラの響きとともに、残酷な、悪対悪の食いあいが描かれる。
私は、この作品が、もっとも脂ののったヒーロー、〝レクター博士〟の、活躍を描いた物語だと思っている。
羊たちの沈黙の正統な続編でありながら、まったく違う楽しみを与えてくれる。
素晴らしい。
この役はアンソニ-・ホプキンス様以外はいない。