マンション内で数年前から、清掃系の業務に従事されている女性。
年齢はわからないが、50代以上ではない事は確か。
男性スタッフや年配女性が多い中、彼女はとても目立つ。
若い女性である事に加えて、縦横に体格が良いせいもあるには、ある。
とある休日、彼女の退勤時間に偶然にも鉢合わせした事があった。
その日、私は年に3回履けば多い方のスカートを履いていた。
我が家の男衆との別行動が許される喜びを味わいながら、ふわふわ揺れる裳裾を楽しんでいたそんな、単身の休日外出。
「こんにちは。」
すれ違った女性に挨拶し、はっと気づいた。
彼女だ。
いつもの、ほこりっぽい灰色の作業服ではない。
だから、すぐにはわからなかったけれど間違いない。
おそらく天然であろう、ウェーブのある豊かな髪をポニーテールにし、リボンを。
プリーツの多いロングスカートが、さらさらと揺れた。
モスグリーンとホワイトの、レースの多いツーピース。
彼女の、まぶたの上から目尻に引かれたアイライン。
そして同じくまぶたにのせられた、服装と同じ色のアイシャドウ。
つまり、
彼女は間違いなくその時、
「かわいいおんなのこ」だった。
「かわいいですね!」
追いかけていって、そう伝えたかった。
でも、残念ながら理性がそれを、思い止まらせてしまった。
今でも少しだけ、後悔している。
ほんの少しの後悔と、美しいものを見る事ができた満足、そして、自らの常無き裳裾を揺らしながら駅に向かった、そんな日。
次に彼女のスカートが揺れるのを見たら、必ず伝えよう。
「かわいいですね!」の、
その、ひとことを。
では、また。