山奥の寒村に育った、母。
若い頃は一冊の時刻表だけを頼りに、見知らぬ土地に想像のひとり旅をしたと以前、聞いた。
当時の母には何人か、県内外問わずペンフレンドがいたというからおそらく、その影響もあったのだろう。
私にも小学生の頃に、ペンフレンドがいた。
母とは違い、たったひとり。
名前も、今でも覚えている。
自分の名前にほとほと、嫌気がさしていた私にとってはかなりの、まぶしくて素敵な名前だったから。
「ずっと、お友達でいようね。」
そんなふうに言い交わしたわけではなかったから当然、やり取りはちょっとしたタイミングで途切れて、今に至る。
けれど。
もうすぐ40年近く前の事になりつつあるのにまだ、
私は鮮明に、思い出せる。
毎日、学校帰りに郵便受けを開けるまでの胸躍る感じ。
開けたその時に一通の、封筒が入っていた時の嬉しさを。
今年98歳になった実家の祖母が、デイサービスでひょんな事から、昔の旧友に再会したと母からLINEにて聞いたそんな日に、あらためて。
長生き、しましょうね。
そしてまた、いつか。
いつか、笑顔で会えたら。