【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【water】

23/9/14 00:01
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「趣味」「嗜好」「遊戯」「形態」。

おそらく、誰にも理解されない。
だから口にはしない。けれど。
ワタシとアナタだけが、
愛する事を密かに、確かに続けている風景 / 世界。

この電脳遊里・Granにはおそらく、
そんな無数の「秘匿」が泡沫の如く日々、
浮かんでは消えている。

読書、という「表現の自由」の名の下に許された、
他者のヒミツの、「公然窃視」。
ここしばらくの少々、沈んだ気持ちを変えてくれた。
そんな、長編小説。

石田衣良 「水を抱く」

彼女にフラれて落ち込む29歳の俊也は、ネットで知り合った年上の女性「ナギ」にその胸中を話すうちにいつしか、彼女に心惹かれていく。
エキセントリックで蠱惑的な「ナギ」は無差別に幾多の男と関係を持つが、なぜか俊也にだけは「過激な遊び」を仕掛けるものの、性器の交わりだけは許さない。

自分と同じ仮名、飲酒が何よりも好きな「ナギ」に惹かれて買ったのに数年間、通読する事はなかった。
大好きな「池袋ウェストゲートパーク」や「アキハバラ@DEEP」のイメージが今だ強く、わかりやすい性描写の横溢を、受け入れられなかったせいもあるかも知れない。

ふと、数年ぶりに気まぐれに壇蜜の書いた「あとがき」を読んで。
「水を抱く」というタイトルを冠するならむしろこのあとがきだ…
と、深い共感と感動を覚えた。
そしてその流れで、本文に足を踏み入れた次第。

そんなわけで。
あとがきだけでも、一見の価値あり。

そして、残念ながらと言おうかやはりと言うか。
この作品を通読した事で性欲よりも、読書欲が喚起。
只今、「池袋ウェストゲートパーク」を再読中。

「ナギは、
そんな僕のペニスをずるりと、飲み込んでしまう。」
それも、悪くは無いけれど。
今は、西口公園でひょんなことから始まる物語を、
果物屋の一人息子と、体感していたい。

そんな感じのまだ、熱、醒めやらぬ秋のはじまり。



では、また。( ᵕᴗᵕ )
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