【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【barriè:re】

24/2/9 00:26
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ずいぶん陽が長くなったな、と思いつつ夕刻、帰宅。
何やら、次男の表情がいつになく暗い。

「ちょっと、相談があるんだけど……」
いつになく深刻な表情でそういうので、すわ、いじめ問題か!?と若干、身構える母なぎ。

「今日ね、友達が家に遊びにきたんだけど。
その子がね。このうちに、レイがいるっていうんだよ……」

「レイ?いるよ。
アヤナミだね。よく知ってるね、エヴァ好きなの?」

テスト勉強に飽きた中1長男も、ひょい、と顔を出した。
「レイだけじゃなくてレムもいるよ♪」
「ちがう!そういうことじゃないんだよ!!」

聞くと、そのお友達は自称「霊感が強い」らしく。
試しに、お友達が言う我が家の心霊スポット(仮)の前に立ったが、特に何も感じられない。
うーむ。困った。
困ったがしかし、この問題には何らかの回答が必要と判断。

「あのね。花粉って、花粉症じゃない人には何ともないし、そもそも花粉症かどうかに限らず、目に見えたりしないじゃない?
霊も、花粉と同じなんだよ。
霊がいるんだったら悪さをしないように、何らかの対策を立てればいいんだって。
花粉が飛ぶ前に耳鼻科に行って、薬もらうのと同じだよ。」

次男の表情が少し和らぐ。

「なんだ……花粉症か。
ぼく、花粉症じゃないから確かに、花粉が飛んでるっていわれてもわかんないわ。そうか…… 霊は花粉かー!」
「そうそう花粉。なんなら、花粉よりも怖くないよ。
だってほら、うちさ、伊勢神宮からいただいたお札を祭った日本最強の神棚あるじゃん?」
「アマテラスオオミカミは最高神だからね!」

長男、ナイスアシスト。
その豊富な知識をテストに活かせるよう切に祈る。
もとい。
「霊なんか花粉と同じ」というフレーズが「オバケなんてウソさ」並みに効いたのか、一気に次男の表情は明るくなり、安堵。

ありがとうございます、
アマテラスさま他、日本のカミサマたち。
ありがとう、
花粉の他、目に見えない幾多の物質たち。
ありがとう長男。大きくなったよね。

問題の心霊スポットにて、
今宵も、ワイングラスを傾けつつ、つらつらと。

では、また。
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