【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【pillow-book】

24/2/12 00:13
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「はるはあけぼの
やうやうしろくなりゆくやまぎは すこしあかりて
むらさきだちたるくもの ほそくたなびきたる」

かつて「春ってあけぼのよ!」から始まる著書「桃尻語訳 枕草子」を橋本治氏が上梓したのは、「LINEの句読点が怖い」という新人類が出現した今を歴史的に、予見する体になったようにも思う。
執筆者の本音や、思惑は、さておき。

もとい。

洛中在住だった独身時代、休日ごとにしばしば、単館上映の映画を観に行った。
その時に巡り逢えた、作品。

「ピーター・グリーナウェイの枕草子」。

京都の旧家に生まれたナギコは、書道家の父に「肌に直接、筆と墨で文字を書いてもらう」という唯一無二の経験を経て成長し、旧家令嬢として相応の相手の元に嫁ぐ
…が、自らを偽れずに、離婚。

香港にてモデルとして才能を開花させつつ、年下のイギリス人翻訳家と出逢う。
心身の交歓の合間に、お互いの肌に、筆で書を連ねる。
豊かな感性を持つ恋人とのそんな愉悦、至福のひとときはしかし残念ながら刹那。

ナギコは端的にいうなら「愛」ゆえに、父と恋人、両方の仇討ちを企図する。
自らの愛した「書」で以て……。

当時はかなり、諸々と実験的だったらしいこの映画作品。
その雰囲気が、上映映画館のプチアングラな雰囲気に添っていて。
「早く、家に帰ろう。」
なんだかそんな、妙に優等生的気分で1人暮らしのアパートに、帰宅した記憶あり。

「日活ロマンポルノ」って単語を知ったのって、
いつだっけ?
さかのぼればそれは、小学6年生の時に読んだ小説「恋する女たち」。
同じく氷室冴子氏の名作「なんて素敵にジャパネスク」からは「夜這い」「後朝」なんて単語もようよう仕入れたりしたし、思えばかつて「草薙太夫」を豪語するに至った素地から、いまだに何も、抜け出せていない。

ここ、電脳遊里における自身の変わらぬそんな、
幻想脳に惑溺しつつ。
日活ロマンポルノ……
というには御粗末な自撮りにて、失礼。


では、また。
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