【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【emergence】

22/11/16 18:39
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次男の懸案事項であった「ちょうちょむすび」。

低学年時分は、マジックテープタイプのスニーカー利用により、修得の必要は無かった。
しかし高身長DNAによるサイズアウト驀進は例外無くおとずれ、春あたりから徐々に「店頭で探すも、紐タイプの靴しかない」現象が起こり始め、ある日スポーツ用品店にてついに「このシューズですと、このサイズからは紐のみです。」という宣告を受けるに至った。

いかにも次男らしい弁舌の巧みさで「ちょうちょむすび」から逃げ回っていた次男だったが、観念して練習。
上手く手を運べずに悔しくて泣いたりもしたがそれでも、ほどなくしてひとりで上手く、靴ひもを結べるようになった。

「全然できなかった事がある日を境に、できるようになった。」
これは、人生における大きな革命であると思う。
私自身、初期スペックが万事低めのため、底辺から汗と涙ではい上がり獲得したコトモノの威力、そして、それを活用し誇りたい気持ちは、痛いほどわかる。

次男は靴箱から、サイズアウトした長男の紐靴を出してきた。
「これ、前からはきたかったんだ。
あきらめてたけどさ。今ならはける。」

少し特殊な形と色味のバッシュに足を入れて、自分の納得のいくように何度も、紐を結びなおしていた。
最初は力加減が足りずに、ちょうちょの片羽根だけが大きくなったり、履いて歩いているうちにちょうちょが紐に戻ってしまったりしたけれど。

今はもう、バッシュの上で羽根を広げる、小さいけれども誇らしげなチョウチョが、2ひき。

それを眺めるにつけ、思う。
羽化する時期は実に、年齢性別に関わらずひとそれぞれなのだなと。

そんな、冬のはじめのささやかな羽化に寄せて。


では、また。
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