【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【duel】

22/8/27 00:18
114 37
「ママ、黒い虫がいる…」

入浴後、身体を拭いているところに八の字眉毛の次男。
「はぁ?そんな虫オレがつぶしてやる!」
威勢よくリビングに出向いた長男もほどなくして、次男と同じ様相にて帰還。
九割方嫌な予感しかしなかったが、バスタオルを巻いてリビングへ。

そして案の定、テーブルの下に存在感を放つ黒光りを発見。
成体ではあるのだろうが幾分、細身ではある。
不思議な事に、ふてぶてしさよりもむしろ、そのたたずまいには優美ささえ感じた。

が、優美であろうと無かろうと対象が頭文字「G」である事に変わりはない。
要は、対象殲滅一択。
私に課せられた重責は大きい。
それなのに、パンツさえ履いていない。
まさしく、丸腰である。
ノーパンはともかく、早急に武器を調達しないと。

対害虫用毒霧噴霧器を右手に、フローリングワイパーを左手に対象に近づく。
「キミ、何だか見たこともないぐらいキレイな濡れ羽色だね…?」
などと必要以上に褒めそやして、無駄に殺意を抱いて感知されないように予防策を講じた。
しかし敵もさるもの、何かを察したのか2歩ほど前進。が、まだ駆け出す様子は無い。

「この期に及んで敵ながら天晴…
だが、そこまでだ!」

動き出す前に、毒霧を頭部に浴びせた。
まずは頭を狙う。戦場の鉄則ゥ!
そのまま壁によじのぼろうとするところを、ワイパーで薙ぎ払う。
床に落ちてジタバタ多脚を動かしているところにさらに、腹部に集中的に噴霧。
動かなくなったところを、ワイパーで圧力をかけた。制圧…か!?

遠巻きに見守る息子たちに、ビニル袋と箱ティッシュを持ってこさせた。
これで脱出できたらプリンセステンコーもびっくりだよ、などと思いながら、動かなくなった対象を数枚のティッシュでくるみ、二重にしたビニル袋に包んで廃棄。

一部始終を終えてため息をついて立ち上がったその時、リビングのドアが開いてリモワを終えた夫が顔を出した。
顔を出すなり、プーと吹き出す。
「ママがね、ゴキブリを倒したんだよ!」
興奮気味に報告する次男。ニヤニヤしている長男。

そしてノーパンバスタオルのヒーロー、緊張感から解放されてひとこと。

「世界を救うのに必死だったんだよ!!」

以上、夕食約10分前の椿事でした。
ではでは、また。
(c)gran-tv.jp