【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【after-ward】

21/12/20 18:39
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「なぎさん。
ネットの向こう側の人間関係の、その先にあるものって何だと思いますか?
私は、例えばそれは『親しくなったその人を、自分の心に住まわせること』だと思っています。
日常の中で、その人と、その人とともにあった風景を折に触れて、思い出す。
そういう事だと思うのです。」

以前、とある男性ブロガー様のご紹介により、サイト内の女性会員の方と交流を持つに至ったお話をこちらで、書かせていただきました。
物腰柔らかく、教養も深く、感性の鋭敏な、誇示していないのにも関わらず、こぼれるような女性性を持ち併せておられて。
そんな彼女から得た所は多いのですが、中でも白眉中の白眉が、冒頭のコトバでした。

人生半ばを過ぎ、年が明ければまた一歩確実に、五十路への道行き。
初老、というにはまだ早いはずですがそれでもふと、想像するのです。
「おそらくこの先、次々と、親交を持った人々との別れが増えていくのだろうな。」と。

そして、それはおそらく多分に「今生の別れ」をも含むものになるだろうなと。

長引く疫病禍も相まって、また、おそらく心身の経年変化も大いにあり、そんな事を考えてはふと、涙する。そんな事も、少なくはなかったこの一年。

先日、若き日にいただいた2通のラブレターを再読しました。
同じ方からの2通。生涯で、2通きりの直筆のラブレター。
彼の静かだけれど一途な想いに、応える事はできなかったけれど(今ならきっと、お試しでお付き合いしてみちゃうと思う・笑)
少なくとも紙面では、色褪せてはいない想いは嬉しくて、ふと「ああ、彼はこうして私の心にずっと、住んでくれている。」と思い至ったのです。

手紙の最後には、当時の彼の、携帯電話番号。
「かけてみようかな。」とふと思い、しかしすぐに取消線を引いてから今回も、手紙をしまいました。
その必要は無いな。と。

誰かに一時でも必要とされた、存在を求めてもらえた記憶はあたたかく、有り難く。
そのあたたかさを「折に触れて」思い出しながら、人生の長い夜をひとり、楽しむ準備をこれからゆっくりと、整えて往ければと存じます。

久々の連載を終えた翌日、
遠景の富士と、薄暮の中で。

ではでは、また。
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