【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【rendez‐vous】2.

21/11/23 23:24
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東海道を西へ西へと駆け抜ける、「夢の超特急」。
富士の佇まいを通過した後、続く風景は僕にとってはさらに、見慣れたものへと変化していく。

「愛知県・・・?
ごめんなさい私、正直、名古屋ぐらいしかわからなくて。」
「僕も同じだよ。岡山・・・っていうと、お土産にもらったキビダンゴしか思いつかない。」 「・・・きびだんごですか?」

場所は、大学付近の居酒屋。
人数合わせで参加したコンパの横が偶然、彼女だった。
彼女も人数合わせで参加していて、話すうちに意気投合した。
そんな、実にありふれたきっかけで僕たちは出会った。

「きびだんご、あれ、種類たくさんあるんですよ。どれだろう・・・?」
「えっ、そうなの?パッケージが、五味太郎さんのイラストだった。」
「あ、それ廣榮堂のですね!あったかくて、かわいいですよね。」

ローカルかつ、マニアックな会話。
これも、出会いという単なる偶然に強い、必然の意味を持たせるエッセンス。
愛知、名古屋、岡山、キビダンゴ、きびだんご、五味太郎。まるでしりとりか連想ゲームのように、ふたりの会話は歩を進めた。

五味太郎。絵本。本全般。
小説。歴史小説・・・・京都。

読書や社会科でしか知らない、古都の歴史ある場所で過ごしてみたかったから。
そして、行きたいと思った大学がここ、京都にあったから。
出会いの必然性に「目的達成者同士」というさらに強力なエッセンスをまたひとつ混入して、 その夜のコンパはお開きとなった。

しかし、僕はまだ「お開き」にはしたくはなかった。
開く、というなら、もう少し開いてそして、のぞいてみたい。彼女の今までをそして、これからを。

・・・と、もちろんこれは今の、そう、今の50代の僕の持って回った、気障なセリフ回し。
当時の「ハル」はごくわかりやすくそして、ストレートに彼女に提案した。

「これから、夜の竜安寺に行ってみない?」
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