【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

[obituary]

21/11/13 13:43
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瀬戸内寂聴さんの訃報が、
予想以上にこたえていました。

二十歳の春に母と2人で、嵯峨野・寂庵の説法会に参加した事があります。
瀬戸内さんはまるで「となりのめっちゃ元気なおばちゃん」みたいに終始快活にしゃべくり、場は笑いにあふれて和み、和んだところに、彼女の生き様がベースとなった独自の「説法」が展開されました。

自由にふるまいたいと思いながら、「〇〇であらねばならない」という、理想だか呪縛だかよくわからぬ想念で、今よりも数段、自分をがんじからめにしていた当時の私。
嵯峨野から北野白梅町のアパートに帰宅する頃には、今まで生きてきた20年間、経験した事のない身軽さを感じたのを、よく覚えています。

彼女は八百比丘尼。ずっと生き続ける。
だから、冥福なんか祈りません。

たわけた意地を独りで張り倒しつつ、
涙をこぼしながら眠った訃報の夜。
涙のわけは複合的なものでしたが、酔っ払っていてよく覚えていません。
(取るに足らない理由である事だけは確実。)

昔、夫と晩酌しながら
「瀬戸内寂聴と富野由悠季が死んだ時のショックを予想するだに、今からおそろしい。」
などと発言し、失笑を買った事があります。

愛するヒトコトモノ、共有した時間、空間。
それら全てに、死を待つまでもなく必ず終わりが来る。
当たり前の事なのに、直面するまでなかなか、
心構えなんてできないものだなと痛感した、
そんな秋の別れでした。

では、また。
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