22時、少し前。
懐かしい顔ぶれが、画面に並んだ。
SNS草創期から発足して17年になる、とある飲み仲間の会の面々。
疫病禍が長期化する中、いつか試してみよう、と言い合っては実現しなかったリモート飲み会。
ひょんな事からそれを、開催する事となったのだ。
「電話待機、してみようかな?」などと思わせぶりな書き込みをごく時折発信するのみで実際、まともに待機した事のない私。
待機できる環境にない、対面してもできる事が限られているからご期待には添えそうもない、などなど理由は多々ある。
けれどもこうして、幾度かリモート会合を試してみて幾分、感覚だけはつかめてきた感じはする。
だからといって到底、「見せあい」なんてできそうにもないし、ご用命も無いだろうけれども。
もとい。
動画の中で動く自分自身もようやく見慣れてきたところで、新たな参加者が登場。
17歳年上の男性。当時、29歳だった私が恋していたお兄さん。
彼と同じ年に追いついたけれど、当然ながら彼も、プラス17年。
それでも、画面の中の彼は今でも変わらないように見えた。少なくとも、私の視覚素子は彼を還暦過ぎとは認識しなかった。
実は今年3月末の平日、所用にかこつけて、彼が経営する店舗にふらりとお邪魔した事がある。
驚きつつも笑顔で出迎えてくれた彼の、当時とほとんど変わらない雰囲気に嬉しさの前に、驚いた。
当時は2人だけになっても上手く会話できずにいたけれど、そこは四十女の年の功。堂々と楽しく会話して、店舗を後にした。
既婚者に恋したのはそれが初めてで、「世の中には本当に、様々な想いのかたちがあるのだな。」と新見地を得た懐かしい思い出。
酔っ払って手を繋いだ程度で過ぎ去った恋だったけれど、確かに我々は相思相愛だった。
「動くなぎちゃん久々に見た。全然変わらないねー。」「それは、お互い様です。」
グラスをあおる彼の横に、自分自身が映る。なんて、わかりやすく嬉しそうな表情なんだろうと恥ずかしくなり、緩んだ頬を引き締めた。
会合終了後、
ヘッドセットを外しながら吐息ひとつ。
やっぱり、電話待機なんでできそうにも無いな。
なんてね。
では、また。