【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【family affair】

21/10/11 01:18
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「ルパン三世」の新章0話の録画を観終えた直後、コトン、と小さな音。

ひょいとのぞくと、寝たはずの長男が細く目を開けて、こちらを見ている。

こういう時に、
「まだ起きてたの!?早く寝なさい」とは言わないのが我が家の、通例。

まずは長男を完全覚醒させて、その意思があるならばリビングに連行。
時季と本人の意思に合わせた、飲み物を提供する。
何ならたまに、酒の肴をほんの少し、提供したりも。

ちなみに今宵の私は正直、新章0話にかなり、あてられていたと思う。

冷蔵庫からチョコをひと包み出してきて、ふたつに割った。
そして、半分を口中に含みつつ溶かしながら、
リビングで冷たい麦茶を飲んでいた長男に半分、差し出した。

「今日だけは歯磨きしなくていいから、
これ、食べてごらん。
ふんわりとしてくるよ。絶対に、眠れるから。
ただし明日、同じ事になってもあげないからね。」

差し出したその半分を受け取って口に運び、程無くして長男は寝た。
実にあっけないほどの、罪無き寝顔で。

安眠を得たその寝顔からは、その甘さ、その味がどう、薬効を奏したかは計り得ない。

ただ、ひとつだけはっきりしている事。

「明日、同じ事になっても、あげないからね。」

私のその意思は、変わらない。
常ならぬ情事は、絶対的制約あるが佳し。
なんてね。

タイトルは、懐かしき村上春樹の短編より。


ではまた。
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