「激ヲタ眼鏡男子と電脳桃源郷で、萌え萌えマニアック相聞歌をねちねちと交わす」
と、いう、もういい加減再三しつこいようだが、品性下劣かつ薄暗い主目的でこちらに登録した草薙。
そんなわけで、モバイルライブチャット=サイト内通話は申し訳無いが当初からまったく、眼中には無かった。
が。
ふとよみがえりし「占いテレフォン事件」。
簡単にトラウマ、という言葉を使うのは好きでは無い。
多少の負の経験や記憶なら、自分自身の力で上書き出来る。
舞台は江戸では無く長崎だが、状況は奇しくも整った。
「わたしだって、しらないおにいさんときちんとおはなしできるもんねだ!」
12歳の草薙がそう息巻く。
そうだよね、くさなぎちゃん。
ずっと、あなたのこと、わすれてた。
あのときの、あなたのこころ。
おともだちのかお。おかあさんのかお。
くやしいよね。いろいろとさ。
おともだちにでもなく、おかあさんにでもなく、
きちんとおはなしできなかった、じぶんがいちばん、くやしいんだよね。
そんなわけで、夫夜勤、しかも坊主ども熟睡のとある夜。
12さいのくさなぎちゃんと、
40歳の草薙少佐による、
最初で最後の、電話待機作戦が決行されたのではあった。
3に続く。