【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【tele-interval】

16/1/27 11:55
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自閉的テレクラリベンジ話。
その2.へ、続く前に挿話失礼。



草薙父方祖母。
2月で、90歳ジャスト。
約70年前から草薙実家の家内一切を取り仕切ってきた、鉄の女。
まだ在職中の母の代わりにいまだに、洗濯をしたり買い物をしたり、勝手に庭木の剪定までしたりする強者。

昨夜、実家の母と電話で話したのだがその時、鉄壁の女帝が最近、私の事をしきりと気にかけているのだと、伝え聞いた。

「親族も誰もいない遠いところにいて、毎日、たいへんだろう。
あの子は泣き虫で弱虫だけれど、根が人一倍強いから、我慢がきく。
でも、なぜだか心配だ。
元気なのだろうか。」

いつになく不安げな面持ちでそのような事を語ったという、祖母。

電話口の母に悟られないように、涙を流した。

言わなければ、わからない事。
伝えなければ、わからない気持ち。
祖母の時代にはきっと、今よりもずっと、そんな事ばかりだったのだろう。
電話はおろか、手紙を出しても届くかどうかもわからぬ一時代。
そんな時代を、祖母は生き抜いた。
誰にも何にも求めずただ、すべての思いや想いを胸にしまい、
日々をただ坦々としかし、力強く生きてきたのだ。


ヒトはとかく「伝えたがる」生き物。
伝達可能な能力及び環境、そして時代が、そんな我々を形成して久しい。

その事は幸福であると同時に「伝達過剰」という弊害をも生んできた。
自らを、発信し続けねばならぬ不安。
他者の有無を、その現状を、確認し続けねばならぬ不安。

そんな焦りに惑いそうになった時ふと、目を閉じる。

自分が遠く、誰かを慮る時、
誰かが必ず自らを、遠くから慮っている。
ヒトは、ひとり。だがしかし、確実につながっている。

見えないし、聞こえない。触れることもできない。
けれども、あたたかく優しい縁(えにし)の糸をただ、ひとりで、想像する。

それはあながち、無駄でも、夢想でも無いかも知れないよ。



ではではまた。
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