【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

【tele-complex】1

16/1/25 21:41
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草薙12歳。

「これ、占いテレフォン。おもしろいから、かけてみて。」
友人のひとりにそう言われて、手渡された電話番号。
占いといえば恋占いしか頭に無い、心身ともに清らかな乙女であった在りし日の草薙。
帰宅すると早速、母に許しを得て電話してみた。

聞こえてきたのは「大人の男の人」の声。
占い師って、女じゃないんだ。
あっ、でもマーク矢崎もマドモアゼル愛も男だし不思議じゃないよね。などと自らを納得させつつその、占い師の次なる言葉を待った。

しかし、占いはいっこうに始まらない。
可愛い声だね、今どんな服着てるの?今日は予定あるの?等々、やたらと質問攻めにあう。
占いのためのデータ収集にしては、何かがおかしい。何かが、違う。

これ、占いテレフォンですよね?
との私の問いかけに男性は一瞬沈黙。
今思えば、紳士的な方で良かったと思う。
私に年齢をたずねて、12さいです、と答えるとまた絶句。
そして、優しい声で言った。
あのね。これ、占いテレフォンじゃないんだよ。
もう、小学生がこんなとこに電話したらダメだよ。じゃあね。

電話は切れた。
友人が私に教えた電話番号は占いなどでは無く、当時はまだ最盛期であった、テレホンクラブの電話番号であった、というオチ。

事の次第を知った母は、激怒した。
友人の家に抗議に行く、と息巻く母をなだめすかし、もうしないから許して、となぜか必死で謝った草薙。
眉目秀麗、文武両道、しかも経済的にも満たされていながらも実は、家庭的に難問を抱えていた友人。
今思えば、平々凡々のほほんと生きている草薙を少し、驚かせたかったのかも知れない。
そんなとんでもない友人との交流がなぜだかこのあともしばらく続くのだか、またそれは別の話。

その後テレクラは過去の遺物となり……今もあるのか?まあそれはさておき、その占いテレフォン事件から28年後。
モバイルライブチャット、という未知の世界を知った草薙の脳裏に、なぜか浮かんだ四字熟語。


「捲土重来」



2に続く。



筆者注。
出来れば、このひとつ前のブログからお読みいただくと、誤解が少ないかと存じます。
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