【草薙電脳艶戯倶楽部】(630)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

美味礼讚之午後。

16/1/17 22:05
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中華料理店で昼食を摂る事になった。

単品で数品選択。時限で飲料飲み放題であったため、せっかくだからと中国茶をいくつか試す。
鉄観音。ライチ紅茶。茉莉花茶。
鉄観音の滋味でまずは冷えた身体をあたため、ライチの香りに包まれて甘い気分に。
追い打ちをかけるように、いや、きっとかけられたかったのであろう。
ジャスミンの薬効が鼻孔と口腔から体内に流れ込む頃にはすっかり、臨戦態勢は整っていた。

春巻きの皮の歯ごたえは完璧だったし、餃子から溢れる肉汁の濃淡も程好い。
米飯とあんの絶妙な境界線。そこに侵食する中華スープの、三つ巴の混戦に一口で惑溺。

中でも秀逸だったのが、鶏肉のカシューナッツ炒め。
片栗粉をまぶして揚げられた一口大の鶏肉に、パプリカの情熱の赤に、ピーマンの冷静な緑。ネギとカシューナッツの絶妙な焦げ目。それらを包み込みまとめるソース。鶏ガラ、オイスター、塩、醤油、ごま油。あとは何が入っているのであろう。

いや、なにが入っているかなどもう、問題では無い。分析も解析も要らぬ。

ただただ、快楽に満たされたい。
久々の、五連黒星満天の感覚。
あー。これかこれだったか。
いやー、すっごいね。
かなりやばいぞ。さあ草薙さんどうする?

などと自閉的にドキドキ焦っていたら、場の空気にいい加減飽き果てていた次男が暴れ出しあまつさえ脱糞。
官能のひとときは一瞬にして終幕を迎え、次男を横抱きにしてトイレに脱兎の如く駆け込んだという顛末であった。

なんともはや残念な食後ではあったが、あの至福、あの感覚は数時間経った今でもしっかり、心身にからみついて離れない。
炒め物が食べ尽された後の皿に残った、ソースと油の混在した液体。誰も見ていなかったらきっと猫のように、あの皿をいつまでもいつまでもうっとりと、舐めていたに違いない。

次男の蛮行にも意味はある。
母となったことで私は、救われているのかも知れない。

化け猫にならずに、済んでいるのだから。

ではではまた。
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