【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

キミノナハ。

16/1/2 19:50
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「こもよ みこもち 
ふくしもよ みぶくしもち
この丘に 菜摘ます児
家聞かな 名のらさね
我こそは告らめ 家をも名をも」


引き続き、松の内ですから多少は風雅に。
今宵は、万葉集の巻頭に収録されている歌の冒頭部分より。

キミ、素敵やなー。オシャレさんやし。
住みどこなん?名前、教えてんか。
オレの住みと名前も教えるし♪

現代語訳するとこんな感じ。ってうわ、ざっくり。
でも本当にこれ、きちんと訳してもぶっちゃけ、ナンパの歌なのであります。

古来から日本にある「言霊文化」。
その一例として「名前」=「個人の存在そのもの」とされ、他人に本名を名乗る事は、我しかとここに在りと宣言するとともに、相手に自分自身の存在を支配される可能性をも含むと考えられてきました。

本名では無くまったくの仮名を使うこと。もしくは本名を適度に加工して仮名として使うことで、他者に深く侵入及び侵攻される可能性、その「危険性」を回避できる。
HNを使う事の意義。
自身を匿名化する事で構築される、防壁。

以前、ブログに書いた映画『(ハル)』では「ハル」と「ほし」が交流が進むにつれ自分たちの住まいと本名とを、メールで明かしあう。
自分自身の扉を開く鍵を、他者に手渡したい気持ち。
自ら進んで、明かしたい我と我が身。
仮想現実から現実へ、その侵食を許可する、大きな第一歩。

よくも、あしくも、
その一歩ゆえ、展開する未来。
その行く末は、本人たちにもわからない。

もし、もしも、このサイトのどこかで、
同じ事がおこなわれていたとしたら。
願わくばそれが、絶望の結末では無く、
曇天から射し込むひとすじの光でありますように。

そう、願わずにはいられぬ今日近頃であります。

では、また。
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