【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

電脳艶戯小説『相聞歌』8

15/12/4 12:57
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10/9 13:24 ID:feitian57→ID:Aegis0314

『イージスさん。
あなたの人生に起きた大切な出来事を、私などにお話下さり、本当にありがとう。

あなたが実年齢とは違う設定で在籍されていること、実は、何となく気づいていました。
この世界でそれを追及するのは無意味ですからあえて、問いはしませんでしたが。
やはり、私たちは良く似たベクトルを持って、この世界で出会ったのですね。
イージスさん。私も、あなたに、お伝えしたいことがあります。

今、私は病室でこれを書いています。
これでもう、何度目の院内生活でしょう。
生まれた時から、あちこちの器官に少しずつ不具合を持っていた私は、今までの人生のほぼ大半をこうして、院内で過ごしてまいりました。
不具合を少しずつ、少しずつ様子を見て修正する日々。それが生まれた時からの日常のため、特につらいと感じたことはありません。日進月歩の医療技術のおかげで、今では生体同様のデバイスがたくさんあり、おかげでこれまで、生き延びてきました。

また、豊富な仮想現実ツールや外部記憶媒体のおかげで、院内であっても自分の思うがままに、望むだけ、知識を蓄積し、疑似経験を積むことが出来ました。
たとえそれが、本当の現実でなくとも、
温室の中で育ちそしてなんとか生きている、自らそのものの現実感に欠ける私にとってそれは、さほど問題にはならないことでした。

イージスさん。
私は、今、40歳でなければ、配偶者がいるわけでもない。

かつてのあなた、そして今またここにいる、あなたとおなじ、28歳なのです。」


(続く)
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