【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

電脳艶戯小説『相聞歌』7

15/12/3 22:58
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10/09 11:02
ID:Aegis0314→ID:feitian57

「暑い、夏の日の夜でした。
熱気に任せるように、俺は彼女にサイト外での交渉を持ちかけるメールを送りました。
彼女の答えは、ノーでした。サイトの禁止事項は守って楽しみましょうね。というような文言でした。
客観的に見れば当然、予想される返事でした。でも、当時の俺はその言葉を自分に都合よく「もてあそばれた」と脳内変換してしまったのです。
彼女がいつも変わらず、やわらかく、あたたかかったから、自分だけが熱くなっている気がしていた。子供あつかいされ、あしらわれたようで恥ずかしかったし、プライドが傷つけられたように感じてしまった。

ふざけんな。なめてんのか。やっぱり遊びかよ。そんなふうなひどい言葉がつい、出ました。

翌日。サイトに彼女はいませんでした。
退会していたのです。
その日のうちに俺もサイトを辞めました。そしてしばらく、一切を、考えないことにしました。よくあることなんだ。辞めるには、良いきっかけだったんだ。そう、自分を納得させて。

退会し、家庭を持ち、20年が過ぎました。当時のサイトはもうありませんが、ひょんなことからこのサイトを見つけました。
気付いたら登録申請をしていました。しかも、当時と同じハンネ、同じ年齢で。

そして、飛天さん。あなたの存在を知りました。忘れかけていた、28歳の自分がよみがえりました。
二度と、同じ失敗をしたくない。だから、ただ見てるだけでいい。と設定してあなたに近付きました。

しかしそのうちに、足跡をつけたくなりそしてイイネ!を押したくなり……28歳の自分がどんどん、48歳の自分を侵食していきます。サイトをやめなければまた、ひどいことになるかもしれない。そう思いながらも、28歳のイージスを演じることをやめることはできませんでした。

俺は今、28歳のイージスでありまた、48歳のイージスでも、あります。ですから、サイト外でのつながりを持てないのも納得できます。
ただ、28歳のイージスが泣いています。20年前と同じく、少年のように、あなたを想い泣いています。
そのことだけは、わかって下さい。

退会は、1日だけ保留します。あなたのことを、見届けたいから。最後まで。

では。」

(続く)
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