【草薙電脳艶戯倶楽部】(629)
草薙(49)
ヒミツ・不明/その他

たからもの。

15/11/13 12:36
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どこからか、拾ってきたのだろうか。
毎日、登園する時にいつも、小さなガラス玉を握りしめている次男。
必要以上の私物を保育園には持ちこめないため、園に着いたら次男から一時、預かる。おんぶにギャン泣き夜泣きに朝泣きと目下、手のかかりまくる次男だが、妙にあきらめというか、ものわかりの良いところもあり「まあ、あとで返してくれるんなら」といった風情で快く、手渡してくれる。
昨日は、とても急いでいた。坊主どもを園に放り込み、自転車で爆走。

コンコロコーン。小さな音がした。
預かったガラス玉が転げ落ちてしまったのだ。
この、忙しい時に!
そのまま爆走を続けようとしてふと「待てよ?」と立ち止まり、そのままUターンし、落としたと思われる地点に戻った。
小さな玉だけれども不思議と、戻れば、見つかる確信があった。それが、当り前のような気がした。

そして実際、私の眼は道端のちいさなちいさな玉をとらえ、そして私の手はそれを無事に、拾い上げることができた。
結局、始業時間にもいつもどおり間に合った。

心がすうっと、透明になった。幸せな透明感。

ひと呼吸して、あわてないで、ためらわずに戻ろう。
きっとそのほうが、たいせつなものをなくさずにすむね。

ではではまた。
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